気象防災アドバイザー(国土交通大臣委嘱)、防災士
元気象庁地震火山部 元和歌山地方気象台長、2020年気象庁退職
【専門】地震学、地震・津波・火山防災、気象防災

令和8年5月下旬から、新たな防災気象情報が始まります。このため、日本防災環境では、新たに「気象防災」の特集をHP上に解説して防災気象情報や避難情報についてその重要性をご説明することとしました。個人のご自宅やご自身の関係する事務所等の施設において、防災気象情報や避難情報を正しく知っていただき、いざという時に、命を守る行動につなげていただければと思います。
NPO日本防災環境は、防災マニュアルや防災計画、避難確保計画、BCPの作成、避難訓練・避難所運営訓練、防災アドバイザーなど、可能な限りご支援をしてまいります。お気兼ねなくご連絡ください。
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はじめに
我が国はその自然的条件から、地震、津波、暴風、竜巻、豪雨、豪雪、火山噴火等、多種の自然災害が発生しやすい特性を有しています。気象についてみると、地球温暖化の影響で、近年、100mmを超える雨が頻発するなど,雨の降り方が、局地化・集中化・激甚化しています。短時間強雨、猛暑日の増加、台風の強度増大などにより、洪水、土砂災害等のリスクが高まっています。ここでは、気象防災について、最新の防災情報の体系を紹介し、いざという時にどうすればよいのか考えてみましょう。

2.気候変動と最近の気象災害
2025年に発表された、気象庁の「気候変動ポータル」によると、ここ数年の平均気温偏差は、長期変化傾向の変動よりも明らかに上がっています(図1)。また、アメダスで観測された大雨の発生回数(図2、1時間降水量が50mm以上の年間発生回数、1時間降水量が100mm以上の年間日数)には、増加傾向が現れています。

図1:日本の年平均気温偏差の経年変化(1898〜2025年)黒線は各年の偏差(1991〜2020年の平均)、青線は偏差の5年移動平均、赤線は長期変化傾向。2025年の日本の平均気温の基準値偏差(+1.23℃)は、1898年以降3番目に高い値となりました。日本の年平均気温は、長期的には100年あたり1.44℃の割合で上昇しています。特に1990年代以降、高温となる年が頻出しています。
(ホーム>各種データ・資料>気候変動ポータル>気温・降水量の長期変化傾向>日本の平均気温)

図2 全国の1時間降水量50㎜以上、1時間降水量100㎜以上の年間日数(気象庁ホームページ「気候変動ポータル」より(ホーム > 各種データ・資料 > 気候変動ポータル > 大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化)
棒グラフ(緑)は各年の年間発生回数を示す(全国のアメダスによる観測値を1,300地点あたりに換算した値)。折れ線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示す。
最近では、2019年の「令和元年房総半島台風」、「令和元年東日本台風」(図3)をはじめとする台風や2020年の「令和2年7月豪雨」、2024年の9月の低気圧と前線による大雨などにより、全国各地に大きな被害が発生しています。
2024年9月の例では、元旦の「令和6年能登半島地震」により石川県を中心に甚大な被害が出ていた中、9月20日からの前線に伴う大雨により、さらなる大被害となりました(この大雨による死者数17名、負傷者数64名(令和7年1月28日総務省消防庁より))。また、2025年も、8月6日からの東日本、西日本に係る大雨被害や台風第22号、23号による伊豆諸島への被害もありました。台風第15号では、静岡県牧之原市付近において過去最大級のスケールを持つ竜巻も発生しています。
図3 2019年10月「令和元年東日本台風(台風第19号)」の気象衛星画像(気象庁ホームページ「観測画像の紹介」より)
3.防災気象情報と避難情報
気象災害発生前から、気象庁は、「防災気象情報」と呼ばれる情報を適時発表しています。「防災気象情報」は、住民等が主体的に避難行動を判断するための参考となる「状況情報」とも言えます。一方、市区町村が発表する「避難情報」は、住民の避難行動を直接促す情報です。これらの情報を使って、自分のお住いの地域の災害の危険度や現象の状況を把握し、避難のタイミングや避難行動を考えましょう。
気象庁からは、現象の種類や危険度に応じ、注意報や警報、特別警報などをはじめ、さまざまな防災気象情報が発表されます。また、河川の水位の情報や土砂災害にかかわる情報は、気象庁と国土交通省または都道府県と共同して発表されています。防災気象情報の発表を受けた市町村は、対応する災害の危険度を参考に、地域ごとに避難情報を発表します。避難情報は、段階的に「警戒レベル3高齢者等避難」、「警戒レベル4避難指示」、「警戒レベル5緊急安全確保」となっており、速やかに住民へ避難行動を直接促します。防災気象情報は、「警戒レベル1」から「警戒レベル5」までの5段階の警戒レベルと対応付けられ、令和元年(2019年)から運用が開始されました。

4.新たな防災気象情報
気象庁は、令和6年6月に取りまとめられた 「防災気象情報に関する検討会」の提言を踏まえ、令和8年5月下旬(予定)から新たな防災気象情報の運用を開始します。
河川や雨などに関する防災気象情報を「河川氾濫」、「大雨」、「土砂災害」、「高潮」の4種類に整理し、それぞれ5段階のレベル(警戒レベル相当情報)で発表します。 さらに、警戒レベル4相当の情報として、従来の警報と特別警報の間に位置する「危険警報」を新設しました。また、自治体が発表する警戒レベルとの対応がわかりやすいように、情報名そのものにレベルの数値を付けて発表することとし(例えば「レベル3大雨警報」など)、レベルの数字でとるべき防災対応がわかるように改善しています(図4)。
防災気象情報のレベル2では災害の種類にかかわらず、「注意報」、レベル3では「警報」、レベル4では「危険警報」、レベル5では「特別警報」といったように各レベルで統一感を持った情報名称を用い、レベルの数値を付すことによって、情報名と警戒レベルとの対応がわかりやすくなりました。これらの防災気象情報によって、各地域の災害の危険度をリアルタイムで把握しましょう。
図4 警戒レベル相当情報の新たな情報体系。令和8年5月下旬から開始予定。(気象庁ホームページより。ホーム>新たな防災気象情報について(令和8年~))
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/keiho-update2026/index.html

5.防災気象情報の活用と避難行動
警戒レベルと対応行動(5段階)をまとめると次のようになります。下線が自治体から発令される避難情報の名称です。
警戒レベル5(緊急安全確保):すでに災害が発生、直ちに命を守る行動、安全確保
警戒レベル4(避難指示):危険な場所から全員避難
警戒レベル3(高齢者等避難):高齢者など避難に時間を要する人は早めに避難
警戒レベル2(大雨等の注意報):避難行動を確認(避難場所や避難ルート)
警戒レベル1(早期注意情報):災害への心構えを高める
警戒レベルと自治体の避難情報、住民のとるべき行動あるいは新たな防災気象情報とはどのように対応しているかを図5に示します。
警戒レベルの1から5に対応して、現象の状況や住民がとるべき行動、自治体の避難情報を示しています。また、警戒レベルに対応する防災気象情報(警戒レベル相当情報)を併記しました。避難は市町村が発表する避難情報の警戒レベル3高齢者等避難の段階から開始する必要があります。自治体から警戒レベル4避難指示や警戒レベル3高齢者等避難が発令された際には速やかに避難行動をとってください。一方で、多くの場合、防災気象情報は自治体が発令する避難指示等よりも先に発表されます。このため、危険な場所からの避難が必要とされる警戒レベル4や高齢者等の避難が必要とされる警戒レベル3に相当する防災気象情報が発表された際には、避難指示等が発令されていなくてもキキクル(危険度分布)や河川の水位情報等を用いて自ら避難の判断をしてください。警戒レベル4避難指示までに必ず避難しましょう。

図5:警戒レベルと自治体の避難情報、気象庁等の防災気象情報の対応(内閣府ホームページ等から作成)
※「防災気象情報」の各欄の●●には、氾濫、大雨、土砂災害、高潮のいずれかが入る。
※1 市町村が災害の状況を確実に把握できるものではない等の理由から、警戒レベル5は必ず発令されるものではありません。
※2 警戒レベル3は高齢者以外の人も必要に応じ、普段の行動を見合わせ始めたり危険を感じたら自主的に避難するタイミングです。
なお、警戒レベルに対応する防災気象情報は、警戒レベル相当情報としており、国・都道府県が発表する防災気象情報(氾濫、大雨、土砂災害、高潮)のうち、居住者等が自ら行動をとる際の判断に参考となる防災気象情報と5段階の警戒レベルとを関連付けるものです。市区村長は、防災気象情報(警戒レベル相当情報)のほか、地域の土地利用や過去の災害実績なども踏まえ総合的に避難情報の発令をすることから、警戒レベルと防災気象情報(警戒レベル相当情報)のタイミングや対象地域は必ずしも一致しません。防災気象情報は、危険を早めに察知し、避難行動・準備に移るために活用するものとしてください。
5-1. 緊急時の行動
それでは、例えば、自分の今いるところが大雨となった際に、私たちはどうすればいいのでしょうか。考えうることをまとめました。
- 今自分がいるところの周りの状況を確認しましょう。
- TV・ラジオを使って、今いる場所の気象情報を入手しましょう。また、PC・タブレット端末・スマートフォンなどを用い、防災や気象情報のアプリケーションソフト(通称:アプリ)を使って気象情報を把握しましょう。特に、現在居る場所にどのような防災気象情報が出ているのかを確認しましょう。
- 併せて、気象庁から発表される「早期注意情報」や「時系列情報」を気象庁ホームページなどで確認しましょう。
- 避難に備えて、ハザードマップで、以下の内容を確認しておきましょう。
- – 避難場所や避難所の位置と避難経路
– 災害リスクの種類
– 災害リスクの種類
– 浸水深や土砂災害の危険度 - 非常用グッズの確認・準備
自分の状況や気象情報などを確認する中で、避難をどの段階で考えればいいのでしょうか。避難を考える必要があるのは、自治体から警戒レベル4避難指示や警戒レベル3高齢者等避難が発令されたときです。この時には速やかに避難行動をとってください。
警戒レベル3高齢者等避難が発令された場合、高齢者や障害のある方、妊産婦、乳幼児など避難するのに時間がかかる方やその支援者は、この段階で危険な場所から避難しましょう。その他の人たちも、この段階で避難の準備を整えましょう。この段階で気象庁等から発表される防災気象情報は、レベル3の警報(警戒レベル3相当)にあたります。
警戒レベル4避難指示が発令された場合は、すでに災害が発生していておかしくない状況になっています。警戒レベル4が出るまでに、避難しておきましょう。警戒レベル4は、危険な場所から全員が避難するタイミングです。自治体から警戒レベル4避難指示が出たら、その指示に従いましょう。この段階で気象庁等から発表される防災気象情報は、レベル4の危険警報(警戒レベル4相当)にあたります。
警戒レベル5緊急安全確保が発令された場合は、すでに、川の氾濫や土砂崩れが起きている可能性が高い状況です。命が危険な状況になっていると考えられます。洪水や土砂からの避難のため、外への移動が危険な場合は、できうる限りの安全確保をしましょう。今よりも、少しでも安全な場所へ避難しましょう。例えば、建物の中でも二階以上や崖の反対側などのより安全な場所に退避するなどして安全を確保しましょう。この段階で、気象庁等から発表される防災気象情報はレベル5の特別警報(警戒レベル5相当)にあたります。
なお、警戒レベル5緊急安全確保は、市町村が必ずしも災害の状況を確実に把握できるものではないことから、必ず発令されるものではありません。

5-2. 平時からの行動
緊急時に適切な行動をとれるように、平時から以下の点に留意する必要があります。個人の避難行動と、施設管理者等事業者の対応に分けてまとめてみました。
◾️個人と事業者(施設管理者等の)共通事項
- まず、自分が今いるところを確認し、近い避難場所や避難所はどこか、避難経路はどこを通るかなどを地区のハザードマップや防災マップなどで確認することが大切です。
- マップには、これ以外に、土砂災害警戒区域や津波や河川の洪水時の浸水域が示されています。これも併せて確認しましょう。ハザードマップや防災マップは、市町村のホームページにもあります。
- 非常用持ち出し袋に必要な防災グッズを普段から入れておきましょう。食料品はローリングストックするのが効果的な方法です。日常的に消費する食品や日用品を備蓄し、使った分だけ新たに補充することで、常に一定量を保つ備蓄方法で、日用品を消費しながら補充することで常に新しいものをストックでき、賞味期限が切れる前に消費することで、食品ロスを減らすなどのメリットがあります。
- 防災グッズの例・・飲料水、食料、非常用電源、ラジオ、懐中電灯、医療用品、衣類、簡易トイレなど
- 飲料水や食料品、簡易トイレなどの防災グッズは約1週間分を用意しておくとよいでしょう。
- 気象情報や河川の情報、市町村の避難情報を確認する方法を知っておくことが大切です。こちらも普段から覚えておきましょう。TV、ラジオは重要な情報源ですし、PCやスマートフォンでインターネットから、気象庁や国土交通省、都道府県や市区町村のHP、民間気象会社の提供するアプリなども用意しておくと便利です。非常用バッテリーなども準備しておきましょう。携帯用ラジオは昔も今も、電池だけで動きますので停電が長引いても使用できます。
◾️事業者(施設管理者)向け
- 事業者として普段から実施しておくべき内容は、防災マニュアル、避難確保計画、BCPの策定です。管理者は普段から内容を確認し、年に1回以上は定期的に防災訓練を行いましょう。
- ご自分のオフィスビルの非常用電源装置等の設置場所がどこであるか、浸水防止のための部屋の耐水性(窓やドア等)の確認、土のうや止水板の設置、地下空間への水の流入防止措置などにも注意を払いましょう。

また、小中学校や公民館に行くことだけが避難ではありません。「避難」とは難を避けることを言い、内閣府策定の「避難に関するガイドライン」に示されている以下のような種類の行動が考えられます。普段から緊急時にどう行動するかを決めておきましょう。

1. 行政が指定した避難場所への立ち退き避難
2.安全な親戚・知人宅への立ち退き避難
3.安全なホテル・旅館への立ち退き避難
4.屋内安全確保
(内閣府防災情報:「避難情報に関するガイドライン」のポスター・チラシより)
6. おわりに
令和8年5月下旬から開始される新たな防災気象情報や避難情報を中心に、気象防災についてご説明しました。日本全国どこでも、風水害は発生します。いざという時に、ご自分の命、家族の命をしっかり守れるように、ご自宅・各事業所・施設等で、もう一度緊急時にどう対応するかを相談しておきましょう。
最後に、ご参考まで、防災気象情報等の入手先について、以下に整理しましたのでご参考にしてください。
気象庁等からの防災気象情報の入手
<方法> 防災行政無線、TV、ラジオ、PC・スマホ(インターネット、市町村の防災情報、気象庁キキクルなど)
<内容> 大雨等の早期注意情報、時系列情報、注意報や警報(例:レベル4土砂災害危険警報)など
市町村からの避難指示などの避難情報の入手
<方法> 防災行政無線、TV、ラジオ、PC・スマホ(インターネット、市町村の防災情報など)
<内容> 高齢者等避難、避難指示、緊急安全確保など
参考にした各種HP(公的機関)
◎ 気象庁
- ・「新たな防災気象情報について(令和8年~)」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/keiho-update2026/index.html
- ・キキクル(危険度分布)・・気象庁ホーム>キキクル(危険度分布)https://www.jma.go.jp/bosai/#area_type=class20s&area_code=1310300&pattern=rain_level
https://www.jma.go.jp/bosai/risk/#lat:36.491973/lon:138.999023/zoom:4/colordepth:normal/elements:hazardmap&land - ・防災気象情報(気象庁、各気象台ホームページのTOPページ>「防災情報」「防災気象情報」
例:気象庁ホーム>防災情報
気象庁 | 横浜市の防災情報 https://www.jma.go.jp/bosai/#area_type=class20s&area_code=1410000&pattern=default
◎ 国土交通省
- ・川の防災情報 https://www.river.go.jp/index
◎ 自治体
- ・避難情報(各自治体のHP参照、以下、神奈川県と東京都の例)
• 神奈川県防災情報ポータル https://www.bousai.pref.kanagawa.jp/
• 東京都防災ホームページ https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/index.html
◎ 内閣府
- ・「避難情報に関するガイドライン」 https://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideli