防災コラム

2014年10月30日

今年のエボラは、パンデミックの様相をみせはじめた。

エボラ出血熱が初めて流行したのは、1976年だそうだ。この時はスーダンとコンゴで同時発生し、スーダンでは、感染者数284人(死亡者数151人)コンゴでは感染者数318人(死亡者280人)だったという。その後、エボラ出血熱はアフリカ大陸で22回にわたり突発的に発生・流行していたが、感染者数は一番多い時でも425人であった。

今回の流行では、西アフリカを中心に感染者が増え続け、6月半ばには500人を超え、かつてない勢いで増加している。感染者は7月半ばで1000人、9月10日過ぎには5000人、10月23日には1万人を突破し、過去の流行とは全く異なる勢いで増え続けており、まさにパンデミックの様相を呈して、現在も拡大中である。感染者の増加に伴い、医師が感染する事態も相次ぎ、医療関係者130人近くが亡くなっているとのことである。

こうしたなか、オーストラリア政府は流行が続く西アフリカからの入国ビザの発給手続きを停止するなどの制限をはじめた。

アメリカでは、渡航者や医療従事者に対して潜伏期間にあたる間、隔離する方式を採用している。米軍は、西アフリカでエボラウイルスの感染拡大を防ぐ任務に当たった部隊を基地内で3週間にわたって外部との接触を制限する事実上の隔離措置を実施していることを明らかにしているし、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、「高いリスク」の人は入国後、最大3週間、保健当局の担当者が、直接体温などの健康状態を調べる監視の対象となるほか、公共交通機関の利用や公共の場への外出を控えるよう求めるという。州レベルでは、西アフリカからの乗り継ぎ便が到着する空港がある州を中心に、渡航者や現地で患者と接触した医療従事者などに対し、外出を禁止や州が用意した施設に隔離するといった独自の対策が導入されているそうだ。

しかし、この対策には批判も出ている。27日に国連のパン・ギムン事務総長が「一連の措置はエボラ出血熱への対策の最前線にいる医療関係者に心理的な負担を与えるものだ。帰国した医療関係者らは人類に貢献した特別な人々で、科学的な根拠のない規制の対象とされてはならない」として懸念を表明し、29日にはオバマ大統領が「今、必要なのは現地に人を送ることだ。医療従事者のやる気を失わせてはならない」と述べ、隔離策を批判したという。
彼らは、多くの医療関係者を現地に送ることが、最善の策と考えているようで、医療関係者のヤル気を削ぐ対策を批判しているようだ。しかし、今回の感染状況は、今までと全く様相が異なる事態であることも事実で、世界各地に拡大するおそれも十分にありそうだ。この先、どのような展開になるのか目が離せない事態である。


2014年10月20日

「平成23年東北地方太平洋沖地震」以降の地震・噴火を考える

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は、千年前に起きた貞観三陸地震と同じ規模であったと言われている。それは津波の規模がほぼ同じであることから推測されることで、勿論、貞観地震の規模や詳細な震源域の広さなどがわかっているわけではない。ただ、もし、同じ規模だったとするとこの貞観時代におきた地震や火山噴火が、今後発生してもおかしくはないと言える。

三代実録という古文書で、貞観時代に起きた天変地異を見ると次のようになる。
貞観5(863)年:越中・越後地震で死者多数。貞観6年(富士山噴火、阿蘇山噴火)。
貞観9年(阿蘇山噴火)。貞観10年(播磨・山城地震)。貞観11年(貞観三陸地震・津波)。貞観13年(出羽国、鳥海山噴火)。貞観16年(薩摩国、開聞岳噴火)となっている。
地震と噴火が連続しており、まさに地殻大変動の時代だったといえる。

ひるがえって、東北地方太平洋沖地震の規模をみてみると
牡鹿半島の東南東約130km(日本海溝)付近の三陸沖の海底、深さ約24kmを震源として発生した海溝型地震で、震源域は岩手県沖から茨城県沖にかけての幅約200km、長さ約500kmの広範囲にわたるもので、マグニチュードはMw9.0、日本観測史上最大であるとともに、世界でも超巨大地震であったとされている。即ち、地殻の大変動が起きたということだ。

となると、今後、千年前と同じような災害や今まで経験したことがない地震や火山噴火の現象が起こっても不思議ではないし、逆に今まで周期的に発生していたとされる関東地震や南海・東南海地震の周期性も狂ってくるかも知れないとする考え方もできる。つまり今までの周期性とらわれない見方も必要になると言えそうだ。
火山活動に注目するなら、富士山が噴火することを考慮に入れる必要もある。また桜島、西之島、新燃岳、口永良部島といった現在活動中の火山や阿蘇山、草津白根山、蔵王山、えびの高原(硫黄山)といった火山性地震が発生している火山にも注意を払う必要がありそうだ。


2014年9月30日

御嶽山の惨事は不可抗力だったのか

9月27日のお昼前に 御嶽山が噴火した。
多くの登山者が頂上付近でお弁当を食べる時間帯に、いきなり立ち上がった噴煙と火山礫の直撃。よもやの事態に多くの方が亡くなり、また怪我を負うことになった。命を落とされた方々に深く哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈り致します。

日本にある主な火山270弱(理科年表)のうち、47火山を常時観測が必要な火山とし、更に30火山を「噴火警戒レベルが運用されている火山」としている。御嶽山はそのうちの一つであり、観測体制はそれなりに整っている火山である。

今回の噴火の前、9月10日ごろから山頂付近を震源とする火山性地震が増えていたほか、地下での活動があることを示すとされる体に感じない低周波地震も起きていた。(火山の状況に関する解説情報(御嶽山第3号)26.9.16_16:00)
これについて気象庁は、「地殻変動を伴わなかったので噴火警戒レベルは変更しなかった。・・・・・」としている。
その結果、登山者の殆どは、「危険である兆候」を知ることもなく、また、一部の登山者は危険を感じつつも逆に「レベル1」であることに安心してしまったという恐ろしい事態となった。

気象業務法では、「気象業務」として七つ業務が掲げられているが、そのうち、上から三つの業務は次のようになっている(要点を記述)
①気象、地象(火山現象はこの中に含まれる)、地動及び水象の観測とその成果の収集と発表
②気象、地象及び水象の予報及び警報
③気象、地象及び水象に関する情報の収集と発表
予報・警報はさておくとしても、①と③には「得られた情報や観測結果を発表する」ことが明記されているのだから、せめて、観測事実だけはストレートに庶民に知らせるべきではないだろうか。同法の第13条には、予報や警報は、「・・・一般の利用に適合する予報及び警報をしなければならない。・・・・」と記述されているのだから、一般庶民に事実を事実としてごく自然に伝わる発表要領を工夫して欲しいものである。


2014年9月18日

地球の温暖化の原因について

気象庁は、9月3日に異常気象分析検討会(臨時会)を開催し、この夏、西日本各地で降った記録的な大雨については、偏西風が南北に蛇行し、南からの湿った気流が本州付近に停滞したことによる影響と分析し、数十年に一度の「異常気象だった」と結論づけている。

偏西風を蛇行させた要因としては、太平洋東部やインド洋東部で海面水温が高かったことや、アジアモンスーンの活動が不活発となったことなどが考えられている。検討会では、このほか、近年、ゲリラ豪雨が増えていることについて、地球温暖化の影響との見方が示されるとともに、「今回の大雨のようなことは、近い将来にも起こる可能性がある」とも述べている。

「海面水温が高かった」と言えば、今年は、関東以南の太平洋側や沖縄などに棲むヒョウモンダコ(猛毒ダコ)が、九州北部や山口県などの日本海側で発見されたり、南の深海に生息するダイオウイカ、リュウグウノツカイなどが、日本海や下北など東北の海で捕獲されるなど、異常を伝えるニュースが多かった。これらは、海面や深海の温暖化が進んでいる兆候として解説されていたが、温暖化が起きている理由についての説明はなされていなかった。

IPCCの第4次報告書では、地球の温暖化は温室効果ガスによる影響がかなり高いと述べているが、産業革命以後の高々100年ぐらいに排出されたガスの影響で、海面や深海の温度が上昇するのだろうかという疑問が浮かぶ。

縄文の早期~中期に「縄文海進」と呼ばれる温暖な時期があった。

気温は東日本で2度、西日本で1.5度ほど高く、海水面も現在より3~4m高かった。この時期、青森県の三内丸山に大規模集落が出現し、付近からはマグロや栗など海と森林の幸が発見されている。しかし、その後、1000年~1500年間隔で寒暖が繰り返され現在に至っている。 平均気温の変動幅はこの2000年間に限ってみれば、プラス・マイナス1度ぐらいの幅におさまっているが、このサイクルでいうと現在は、温暖化の方向にある。

こちらは、地球規模の気候変動のサイクルであり、排ガスの規制程度では回避できるとは思えない。地球の温暖化については、もう少し広い視野で考えてみる必要がありそうだ。


2014年8月29日

「消防団を中核とした地域防災力の充実強化の在り方に関する中間答申」について

「消防の動き」の7月臨時増刊号は、第27次消防審議会の特集となっている。
この審議会の目玉が「消防団を中核とした地域防災力の充実強化の在り方に関する中間答申」である。

この審議は、昨年の第185回臨時国会で議員立法によって成立した「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」(平成25年法律第110号:平成25年12月3日公布)を受け、平成26年2月13日に消防庁長官から諮問がなされたため、行われている。

中間答申では、①被用者の消防団への加入の促進、②地域における消防団活動に対する理解の促進、③若者の消防団への加入の促進等 、④女性及びシニア世代の消防団への加入の促進等、⑤消防団員の処遇の改善等 、⑦消防団の教育訓練の改善、⑧地域防災力の充実強化に関する国民運動の展開 など8項目について提言がなされている。

消防庁は、中間答申を踏まえ、平成27年度予算の概算要求を始めとして、地域防災力の充実強化に関する施策に反映させるとしており、また、提言事項のうち地方公共団体における取組が必要なものについては、平成26年7月14日付けで消防庁長官から各都道府県知事及び各指定都市市長宛て通知を発出したとのことである。なお、審議は今後も継続され、その内容は適時「消防の動き」に掲載される。

この法律では、「地域防災力」を「住民一人一人が自ら行う防災活動、自主防災組織、消防団、水防団その他の 地域における多様な主体が行う防災活動、並びに地方公共団体、国及びその他の公共機関が行う防災活動の適切な役割分担及び相互の連携協力によって確保される 地域における総合的な防災の体制及びその能力をいう。」と定義しており、消防団がその中核を担うことを示しているといえる。自主防災組織のリーダー育成研修や図上訓練を進めるためには、目が離せない動きである。


2014年7月31日

局地的大雨と災害

今年の梅雨の特徴は、日本各地に局地的な大雨をもたらしたことだろう。しかも広範囲にわたり同時多発的なゲリラ豪雨が発生した。
6月の梅雨前線による局地的大雨は、3日から実に四回にわたって、波状的に発生した。続いて7月6日からは台風8号による大雨が九州地方全域を襲い、引き続いて日本列島を縦断した。

6月のゲリラ豪雨では、21日にJR指宿枕崎線の脱線事故が発生した。24日の午後には、東京都三鷹市が雷を伴った大粒のひょうに襲われた。降ったひょうが雨水に浮いて低地部に流れ込み、足首が埋まるほど堆積して、立ち往生する車も出るという珍事が発生した。翌25日には、朝霞市で1時間雨量が105.5ミリに達するという短時間強雨に襲われ、東武東上線・和光市駅近くのアンダーパスで車両が水没寸前。警察が車の窓ガラスを割って女性を天井の上に引き上げ、救出するという事態が発生した。
また7月の台風8号では、9日の夕方、長野県南木曽町で大規模な土石流が発生した。

これらの災害や事故は、局地的な大雨が原因となっていることは疑いない。
 気象庁の雨に関する用語解説によると、「局地的(な)大雨とは、急に強く降り、数十分の短時間に狭い範囲に数十mm程度の雨量をもたらす雨」と定義されていた。また、「大雨とは、災害が発生するおそれのある雨」、「豪雨とは、著しい災害が発生した顕著な大雨現象」とあった。 なお、最近気象庁で使用している「短時間強雨」なる用語の定義をさがしたが、見当たらなかったのは意外であった。

気象庁のホームページに「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化」というデータがある。このデータの「1時間降水量50ミリ以上の年間観測回数」と「1時間降水量80ミリ以上の年間観測回数」について、1976年~1985年の10年間の平均と 直近10年間(2004年~2013年)の平均を比較すると1時間降水量50ミリ以上が約1.4倍、1時間降水量80ミリ以上が約1.6倍といずれも増加傾向にある。

「都市型水害」は、この「短時間強雨」の発生回数の増加とともに増えている。これは、都市の下水道施設が「1時間雨量50ミリ」を基準に作られているために生ずる事象であるが、今後、河川の洪水とともに「都市型水害」への対応も重要となる。
蛇足ながら、冒頭で記述した「ゲリラ豪雨」は「予測が困難な、突発的で局地的な豪雨を指す俗語で、予報用語として用いていない」とあった。


2014年7月27日

目を離してはいけない尖閣周辺の事態

最近、尖閣列島周辺に関する報道記事が少なくなっている。 事態が沈静化していると思ったら大きな間違いで、報道が沈静化しているだけのようだ。
海上保安庁のHPには、2008年12月からの尖閣諸島周辺の接続水域内入域及び領海侵入状況が記録されている。これによると、中国の公船がかなり頻繁に尖閣列島周辺に出没していることがわかる。

2010年9月7日、尖閣諸島付近の海域をパトロールしていた巡視船「みずき」が、中国籍の不審船を発見し日本領海からの退去を命じたが、漁船は違法操業を続け、逃走時に巡視船「よなくに」と「みずき」に衝突を挑み、2隻を破損させる事件が発生した。この事件を契機に中国公船が従来以上の頻度で尖閣諸島周辺海域を航行するようになったが、まだ、散発的なものであった。

2012年9月11日に我が国が尖閣諸島のうち3島の民法上の所有権を、民間人から国に移したことを口実として、同月14日以降、中国公船が荒天の日などを除き、ほぼ毎日接続水域に入域するようになり、毎月平均3回程度(最高が7回)領海侵入を繰り返すようになった。

2013年3月、中国の海上保安組織再編成計画が発表され、5つあった海上保安組織の4つを統合して、「国家海洋局」が編成されることになった。こうして同年7月22日に「中国海警局」が発足して、現在の体制となった。それ以降、月平均で約5隻が20日間ほど、接続水域の入域し、月平均3回ほど領海内に侵入している。

接続水域内入域の日数が一番多かった月は今年の4月で、のべ84隻の船が27日間(1日あたり3隻)にわたり徘徊した。日本の南西端の無人島周辺に起きている領海侵入事案は、ニュース性がないためか、あまり報道されない。国民の耳に入らないということは、往々にして事件や事案が起きていないという錯覚を与える。しかし、尖閣列島の領有を主張する中国は領海侵入を「自国領海のパトロール」として執拗に実績を積み上げている。他国による意図的な領海や領空の侵犯事実は、マスコミが株価や為替と報道するように、毎日国民に知らせる仕組みを考える必要がある。