防災コラム

【2013年11月コラム】


2013年11月12日

今年10月、伊豆大島(東京都大島町)で、台風26号による大規模な土石流が起き、多くの犠牲者が出たことは記憶に新しい。
土石流とは、土砂が雨水や地下水と混ざって、河川・渓流などを流下する現象のことで「山津波」とも呼ばれ、土砂災害の原因のひとつとなっている。
伊豆大島は島全体が溶岩で、その上に厚く火山灰が積もっている。普通の雨だと火山灰は水はけが良く、水は下層に落ちるが、台風26号がもたらした豪雨は、地層の上から下まで水がいっぱいとなり、その重みで一気に崩れたという。
なお、流れてきたものが土砂の割合が多ければ土石流、水分の割合が多ければ鉄砲水と区別される。 ところで、伊豆大島では、かつてこの土石流を「びゃく」 と呼び、恐れられながらも警戒されてきた。
江戸時代の文禄年間には島最大の集落を壊滅させ、1958年(昭和33)の狩野川台風では、三原山山麓から土石流が発生、元町が家屋の全壊55戸、半壊49戸、死者・行方不明者各1人、重軽傷者53人という大きな被害を出した。
そうした被害の歴史があるにも拘わらず、伊豆大島では地震や噴火には注意が喚起され、対策が行われてきたが、土石流に対しては認識が甘かったようだ。「びゃく」という言葉を知る人が少なくなり、先人の言い伝えが生かされなかったことも一因だろう。
災害は過去を振り返り、その要因を探り、教訓にすべきだという好例である。

2013年11月11日

「地震が来たら沖に出ろ」という言葉の意味は、津波の発生時に漁船を沖合に避難させて船を守る「沖出し」のことで、各地の漁師たちの間で古くから言い継がれてきた。
ところが、東日本大震災の際には、沖に出て津波を乗り切った船がある一方で、波にのまれた船もあり、危険な行為であるとも言われている。その明暗を分けたのは何であったのか。
この「沖出し」を成功させるには、船の速度と津波の速さの関係や、津波到達までに水深25メートル以上の海域まで避難出来るなどの条件がある。津波の高さによっては、水深50メートルは必要となる場合もあるという。
そこで、東日本大震災の津波で620隻の漁船が被災し、114億円の被害が出た青森県(約450隻の漁船は沖合に避難して無事)が、このほど、「沖出し」のルール作りの支援に乗り出した。 漁港周辺の潮流データを提供するなどして、津波の高さや到達予想時間に応じた避難基準を設けるわけだが、ここで大事なことは、実際の地形は漁港ごとに異なるため、漁協単位で詳細なルールを作ることだという。
青森県では、来年度中に2漁協でルールを作り、将来的には県内53漁協に広げる方針だという。 これまでの「沖出し」は、漁師の勘に頼るという面が強かったが、科学的なデータを取り入れ、人の命も漁船も大事に守るという、究極の最善策と呼べるものだ。
2006年(平成18)の千島列島沖地震を経験した北海道根室市の落石漁協はすでにルール作りなどをしているが、四方を海に囲まれ地震の多い日本は、積極的に全国展開をしなければいけない防災事案のひとつと言えよう。莫大な費用がかかるだろうから、国の援助が当然考慮されるべきだ。

2013年11月4日

東日本大震災の津波で、宮城県石巻市立大川小学校の児童・教職員計84人が死亡、行方不明となった事故に関して、文部科学省が主導して設置された第三者の検証委員会は、3日、6回目の会合を開き、有識者から意見を聞いた。有識者からは「評価の分かれる証言などは丁寧に根拠を説明するのが望ましい」といった意見が出されたという。 ただ、双方の議論の大半が「学校で防災に関する基本的な考え方を学ぶべきだ」などの一般論が多く、傍聴した遺族からは「大川小学校で何が起きたのかという真相に迫った議論になっていない」と反発の声が上がった。
反発の声が上がったのは、むしろ当然のことだと思う。多くの犠牲者が出た未曾有の事態に何故なったかを深く究明すべきであり、遺族の気持ちに添って、この事故の原因を明らかにすべきであろう。
そして、大川小学校の裏山は急な勾配だが、ここを雪に足を取られながらも駆け上がった児童だけが助かっているという事実も認識して、あらゆる角度から検証する必要がある。
さらに、同じ石巻市内にある市立門脇小学校は、石巻港に近く、校舎が津波に襲われた上、震災後の火災で全焼したが、300人の児童のうち、下校した一部の児童を除く275人が、校舎の裏手にある高台の日和山公園に避難し、無事であった。このことも知っておくべきことである。

【2013年9月コラム】


2013年9月30日

 地球は誕生以来46億年を経過した。これまでに大陸は分裂し、移動して規模の大きな大陸となり、山脈が形成され、海ができるなど絶えず形を変え変化し、気候も寒冷の時期や温暖な時期もあり、地球は生きているの感を強くする。■国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書第1作業部会報告書は、地球の長い歴史から見れば僅か約100年の内容だが極めて衝撃的な指摘がある。しかも、報告書の示す影響は計り知れない。例えば、気候の温暖化は疑う余地がないとし、その原因としては、20世紀半ば以降の温暖化は人間活動の可能性が高い。1750年以降の二酸化炭素の大気中の増加は地球のエネルギーの収支の不均衡と指摘した。■このまま推移すると、世界平均地上気温の上昇、海面水位の上昇、陸上の極端な高温の増加、極端な降水が強く頻繁になるなどと予測した。事実我が国においては気象庁の9月2日の発表の様に『極端な天候』に見舞われた。■こうした予測から考えられる影響は、平均海氷面積の縮小、最高・最低気温の上昇、暑い日・暑い夜の増加、大雨頻度の増加、干ばつ地域の増加、海水面の上昇、生態系・自然環境の変化が起き、様々な災害をもたらすことが予想される。■地球温暖化対策は、国連気候変動枠組み条約により地球規模で対応を行っているが、なかなか進捗していないのが現状である。日本としては福島第一原発事故でエネルギーの見通しが不透明の状態であるが、そろそろ見極めをつけ、大所高所に立って温室ガス削減目標を定めてもらいたい。

2013年9月24日

 前回のコラムの"狎なれ"てはいけないに通じる点があるが、基本ルールについて考えてみたい。■野球、柔道、サッカー、バレーボール等のスポーツの世界や商業上の取引でも明文化された規約、規則、ルールを守ることが万事活動する上で基本にある。■9月19日にJR北海道函館本線の大沼駅構内で貨物列車4両列車の脱線事故が発生した。21日に調査の結果、JR北海道は昨年の10月の定期検査で現場のレールの幅が社内規定の基準値を超えていたのを把握しつつも、放置していたことを公表した。その後も緊急点検の結果として補修していない箇所が発見され、23日に適切な線路管理をしていなかったとして謝罪した。■事故の状況、及びその原因については、国土交通省の特別保安監査を待つ以外にないが、報道された状況からは現場の点検、確認、補修処置という一連の線路管理の形骸化、上級組織である本社への報告、本社による支社・現場の指導監督、マネージメント等が不十分であったことが見て取れる。まさに基本・ルールを怠っているといえる。■ともすれば、組織は、時の経過とともに老化し、創業当時の企業本来の目的や趣旨が形骸化してその機能が果たせなくなる。現状のJR北海道はここまで来ているように見える。この際、組織機能、組織文化を根本的に見直し、旅客鉄道会社としての使命を果たせるよう、懸命の改善努力を期待する。


2013年9月17日

 最近の各情勢に見るつけ、"慣れ"ても"狎なれ"てはいけない最近の情勢がある。■東日本大震災から2年半を経過した。原発の放射能漏れが相次ぎ、避難地域の除染も進まず住民の避難所生活が続く。これまで、もぐら叩きの様に当面の処置の対応に汲汲とし、最悪の事態を考慮した抜本的な対策が行われてきてないようにみえる。国は便法に狎れずに国内外の英知を集めて対策を講じてほしい。■尖閣諸島国有化以来1年が経過した。その間中国公船による領海侵犯が日常的に続いており、度重なる報道に麻痺する状態になりつつある。最近、艦船、爆撃機、無人機が尖閣諸島の近傍に出現した。従来ばらばらに尖閣諸島周辺に来ていたが、今後は立体的・組織的に領海・領空の侵犯が生起する可能性も十分考えられる。こうした事態に対しても狎れず、日々新たな気持ちと今後の状況に応じた態勢を整備しで毅然として対応してもらいたい。


2013年9月9日

 防災計画は、昭和36年に成立した災害対策基本法に基づき作成され、東日本大震災後は、その教訓を生かし多くの自治体等で修正されている。簡単に修正と言っても東日本大震災の規模が大きかっただけに該当箇所も多く大変な作業である。■ところで、年輪を重 ねた防災計画と異なり、事業継続計画(以下BCPという)は、日本では地震対策として2006年から政府のガイドラインが発表され、行政と大企業、一部の中小企業で計画が策定されてきた。■こちらも東日本大震災以降、BCPの策定は向上した。例えば、㈱NTTデータ経営研究所の調査によると、2011年調査と比較すると2013年調査では全体での策定済み企業は約1.5倍に増えている。(現在37.0%、東日本大震災発生以前24.6%)しかし、上場企業の計画の策定割合は58.0%、一方未上場企業は34.8%との差があるうえ、計画が未整備の企業が多い。■防災計画は、国土、国民の生命、身体及び財産を災害から守るものに対し、BCPは企業の事業継続を図るものであるが、災害が何時起きてもおかしくないと言われている今日、いずれの計画も必須となっている。未整備の企業においても計画の策定が進捗するよう期待する。

【2013年8月コラム】


2013年8月26日

 東京電力福島第一原発の貯蔵タンクから高濃度の汚染水が流出していることが発見された。東日本大震災以降、たびたび汚染水問題が発生しており、またかの印象を与える。しかも今度は、質量ともに深刻な事態である。■これまで東電はその都度対策を講じていたが、管理及び対策も不十分なうえに対策が後手に回り、挙句の果てに今回の結果を招いたものといえよう。■しかし、そもそも今回のように世界にも影響を与え、後世にも禍根を残し、経済的、技術的、地球環境的にも多大な影響をもたらす巨大な原子力災害の対応を電力供給事業者の東京電力一企業だけに任せてよいのだろうか。この際、国として抜本的で総合的な対策を講じないと世界や周辺諸国から日本政府や日本に対する不信感を招きかねない。しっかりした対応を期待する。

2013年8月19日

 相変わらず尖閣諸島周辺には中国の海洋監視船「海監」が接続水域(領海外側約22㌔)の航行や時には領海侵犯を繰り返している。日本側の慣れを誘いエスカレートする兆候のようにも見える。■現に海洋の監視活動や警察権を統合した新設部署である「海警局」を新設し24日には、その所属の公船「海警」も姿を現している。「海警局」は、従来の国家海洋局の「海監」や農業省の漁業監視船団「漁政」、公安省の海上警備部隊「旧海警」などを統合したもので22日に発足したばかりの組織である。また中国軍機が沖縄本島と宮古島の間の上空を初めて往復するなど行動が大胆になっている。■日本側の対応としては、今後多くのケースを想定しながら大局的な見地に立ち、しかも決して油断することなく、慣れに麻痺することなく、しっかりとした態勢を執り、対応してもらいたいものだ。

2013年8月5日

 日本列島が猛暑に見舞われている。今年は梅雨明けが早く、加えて早くから35℃を超える記録を観測し、しかも全国的に拡大している。8月12日には高知県四万十市で史上最高気温41.0℃を記録している。■この暑さの影響でエアコン、ビ-ル、アイスクリーム、涼しくなる衣料などの売り上げが伸びた。反面、総務省消防庁の発表によると、7月1カ月間に、全国で2万3699人が熱中症で救急搬送され、7月としては過去最多となった。■猛暑は日本だけでなく世界の至る所でみられる。近くの韓国では猛暑の影響で電力不足が生じ、中国では東部や南部の浙江省、江西省、安徽省などでは干ばつが広がり、熱中症による死者も出ている。ヨーロッパでも北半球で猛暑に見舞われている。■猛暑の原因は、直接的には高気圧の強さや偏西風の蛇行といわれ、地球温暖化説も言われているが、定かではない。■当面、猛暑への対応としては気象情報を得て、こまめに水分と休憩をとり体力維持と健康管理に努めることが必要のようだ。

【2013年7月コラム】


2013年7月16日

 9月1日が近づいてきているせいか"防災訓練"が気になる。自治体によっては、東日本大震災の教訓を踏まえて、春先から津波を考慮した避難訓練を行っている。■国では中央防災会議が年度の総合防災訓練を決定し、例年防災の日(9月1日)に訓練を実施している。年度により想定が異なり、防災訓練の項目も少しずつ異なる。ただ重要なことは、基本方針にも書かれている実践的・効果的な訓練と訓練の分析・評価による計画やマニュアルへの見直し(反映)である。■このことは自治体の訓練にも適用される。実際に起こり得る想定や被害状況で、実際に使える手段で防災活動にあたることが重要で、いたずらに最新の機材を並べ防災ショウのような演出は不要であり、むしろ参加者に誤った認識を持たせかねない。■訓練の結果を計画やマニュアルに反映させることは重要であるが、実際反映させたという話はあまり聞いたことがない。■また例年の訓練参加数を調べると規模の割には少ないのには驚かされる。防災訓練の多くの参加者は関係機関に属することが多く、住民の参加は限定的である。関係機関の参加者は若い人が多く、住民の場合は、年配者が多い。参加者を増やすには、実施方法の検討も必要であるが、大手企業等を参加機関に加えることを検討してはどうだろうか。訓練は繰り返し繰り返し行ってこそ身につくものであり、その意味では、訓練回数も重要である。計画の作成は考慮要素が多く大変な作業であるが、訓練の本質に立ち返って、計画することを期待したい。

2013年7月8日

 総務省消防庁は7月5日、災害時要援護者の避難支援対策の調査結果を公表した。■現在の家族は核家族化し、独居者も多いことから、高齢者や障がい者などの災害時要援護者は、災害時の避難が困難になる可能性が少なくないため、あらかじめ市区町村と地域のコミュニティーが一体となって避難支援体制を確立しておくことが必要である。■市区町村の取り組み状況の調査の結果は、全体計画の策定状況は、25年4月1日現在で、調査団体の87.5%が策定済み、25年度末までに98.8%が策定済みまたは策定予定との結果であった。また、災害時要援護者名簿の整備状況は、25年4月1日現在で、調査団体の73.4%(1278団体)が整備して更新中、24.3%が整備途中でこの両者を合わせた97.7%は何らかの形で進めている。■これらの結果を見ると順調に整備している印象を受けるが、自治体のばらつきが目立つ。例えば、24年度までに計画を策定済みの市町村の県は、100%策定済みの県が21府県、全市町村の平均87.5%であるのに対し、半数に満たない県がある。このことは名簿の整備についても同様の傾向にあるため、一部であるが自治体の今後の努力が望まれる。

【2013年6月コラム】


2013年6月30日

 防災計画と防災マニュアルの策定状況が心配である。■防災の計画やマニュアル策定するのは当然であるが、3.11以降計画の見直し等が続き、自治体や企業等での対応が遅れがちである。加えて、そもそも地方自治体等における防災計画等を策定する人材が少なく、公務員は2~3年で勤務を交代することが多いことから防災の専門家が育ちにくい状況にある。■次に気がかりなのは、その実行の可能性である。計画やマニュアルの実効の可能性を見極めるには手法や技術など困難がつきまとう。■計画やマニュアルの記述内容・深さなど記述態度にもよるが、一般に特定の範囲における技術的な手法としては数学的・統計学的シミュレーションがあり、それ以外の手法としては訓練特に図上訓練がある。このうち、計画やマニュアルの手続きを含めて全体の正確性、実行の可能性を見極めるには、全体を網羅し、かつ細部にも検討ができる状況予測型か図上シミュレーションによる図上訓練が適当である。■安全・安心な内容の計画やマニュアルにするためには、PDCAの手順を経た具体的で根拠に裏打ちされたしっかりとしたものにしてもらいたいものである。

2013年6月24日

 平成25年版防災白書が公表された。その構成は、第1部 災害の状況と対策、第2部 平成23年度において防災に関してとった措置の概況、第3部は平成25年度の防災に関する計画である。■特に第1部の冒頭に書かれた指標等から見る我が国の防災対策では、第1に自然災害による死者・行方不明者数、第2に国及び地方公共団体における災害による被害の軽減に向けた取組、第3に住民、地域コミュニティ等における災害被害軽減に向けた取組がある。■この中で問題と思われる特徴は、国及び地方公共団体における住宅等の耐震化は進捗しているが、空港・港湾の運輸施設や下水道施設の耐震化が遅れていること。備蓄は食糧、毛布等は高い確率で整備されつつあるが、テント、簡易トイレ、担架、浄水器は整備が遅れている。防災訓練は一市区町村当たり、年3.6回になっているが、一般に参加者数が少なく取組の強化が必要である。また、人に関わる消防団は団員の減少、高齢化が進んでいる。自主防災組織は、組織率は伸びているが地域的に偏在している。 ■災害はいつ起きてもおかしくない状況であるので、なお一層の減殺対策の整備に努める必要がある。

2013年6月17日

 今週宮城県では防災訓練が行われた。県、市町村等をあげての大規模な訓練であった。ここで訓練について考えてみる。訓練は、「あることを教え、継続的に練習させ、体得させること」(デジタル大辞泉)、また「熟練するため、教えならすこと」(新小辞林)といわれる。用語の説明に従えば、訓練は反復し、動作が身につくようにすることが重要といえる。■防災訓練は、自治体等における地域防災計画及び同マニュアルに基づき、その都度訓練の目標を定め実行計画により実施される。そのような場合、訓練参加者が計画やマニュアルを見ながら災害に対処していたのではタイミングを逸し、訓練を阻害することになりかねない。まして実際に災害が発生した場合は、大事な初動において指示・指令、行動に後れを取り、尊い人命を失う恐れがある。そのため、例外なく日頃から訓練し習熟する必要がある。■現状の防災訓練は国、自治体等で実施されているが、総じて住民の参加者が少なく、訓練回数も少ない。加えて指導者が少ない。この際、特に懸念されるのは、高齢者、弱者対策が不十分なことである。■このため、自治体等の訓練にあたっては、極力訓練の機会を増やし、住民の特性を考慮しつつその多くが参加できる環境を作ることが必要である。また、そのための指導者の育成に意を用いるよう期待したい。

2013年6月13日

 米中会談が7日・8日の両日、米カリフォルニア州パームスプリングの保養施設で行われた。オバマ大統領は再選されて2期目に入り、習近平氏は国家主席に就任して早々の3ヵ月目の会談である。■今回の会談は、サイバー攻撃問題、沖縄県・尖閣諸島問題、北朝鮮問題、人権問題、軍事交流など幅広く話し合われた模様である。■会談の中で話し合われた内容で、我が国にとって危機管理上今後様々な影響を及ぼしてくるのは沖縄県・尖閣諸島問題、北朝鮮問題である。■中国はGNPおいて約10数年前にドイツを超え、2010年には日本を超えた。外交政策では世界特にアフリカに活発に展開し、軍事的には東シナ海・南シナ海に積極的に進出し、緊張状態をもたらすなど国外への積極的な姿勢が目立つ。■我が国としては米国を中心としつつ多国間外交を行い、緊張状態をほぐす努力をするとともに、万が一最悪の事態が生起した場合でも最小限の被害で済むよう、法制、情報収集・指揮系統の一元化、人的・物的準備など態勢を整備しておくことが重要である。

2013年6月3日

 一昨年の東日本大震災以降原発事故対策は、政府・国会・独立した組織による各事故調査委員会が設けられ報告が公表された。その結果、原子力行政に関わる組織が大幅に見直され、国の原子力災害対策指針を受けて原発から半径30㌔圏内自治体の地域防災計画も見直されてきた。■原子力規制委員会のまとめたところによると、4月末現在該当する157自治体のうち119自治体で地域防災計画の策定が終了したとのことである。策定率は76%である。■地域防災計画の策定は当然であるが、問題は中身である。地域防災計画の策定は、各自治体で策定されるが、原子力以外の比較的なじみのある自然災害の計画でも実行の可能性に疑問符を持つのもあるが、ましてや原子力という専門家の少ない分野の計画の実行性については、懸念がある。■策定した計画を検証するためには、第3者機関による専門家会議、検証のための図上訓練などの方法があるが、安全安心の世界を整備し、確立ために計画策定後のチェック(PDCAのCに該当)を確実に行うよう望みたい。

【2013年5月コラム】


2013年5月27日

平成16年の通常国会で武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)がで可決された。■この目的は、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するものであり、この場合に発生した災害を武力攻撃災害としている。■昨年の尖閣諸島の国有化以来尖閣諸島及び同周辺地域において中国の漁船、海洋監視船、公船などは、接続水域(領海の外側約22㎞)内航行や領海侵犯を繰り返し行い、時には航空機により、今月に入り沖縄県の南大東島周辺の接続水域を潜水艦が潜没航行するという示威行動を示している。このような一連の流れからは、手段や質・量に変化を持たせ日本の行動を用心深く監視つつ拡大の一歩を辿っているといえる。■この背景には、3月18日の中国全国人民代表大会における習近平国家主席の人民解放軍らに対する「断固として国家主権や安全、発展の利益を守らなければならない」と日本・尖閣列島を念頭に富国強兵・強硬路線の方針演説、中国外務省の華春瑩報道官による4月26日の定例記者会見での尖閣諸島は「中国の領土主権に関わる問題で中国の核心的利益に属する」との発言、5月8日付の中国共産党機関誌、人民日報は、尖閣諸島以外にも沖縄県について「歴史上の懸案であり、未解決の問題」と主張する論文を掲載するなどに本音が透けて見え、示威行動と無関係とは考えにくい。■我が国に武力攻撃災害が発生しないよう、武力以前における大局的な外交交渉と関係機関一丸となった警備段階の適切な態勢の保持と対応を望む。

2013年5月20日

 2013年度予算が5月15日夜、成立した。一般会計予算総額に復興予算と合わせると過去最大規模の予算となった。■復興予算は、2011年東日本大震災で発生した災害対策に使用される財源であるが、東?地震、東南海地震、南海トラフ地震、東京直下地震、富士山噴火など今後予想される自然災害の防災対策を考慮すると膨大な予算措置が必要となる。■災害対策自体は大変重要な施策であるが、現状の肥大化した財政赤字を考慮するとその災害対策の内容を精査して予算化しなければならない。■その際、施設等の耐震化、堤防や道路の整備などハード面の整備も重要であるが、これには膨大な時間と経費がかかる。現実的で即効性ある対策は、現在低調であるが防災訓練である。特に国・県・市などの対策本部訓練と現地住民等の避難訓練などソフト面の内容である。災害対策には、こうしたハード・ソフト両面のバランスのとれた総合的な検討が重要と思われる。

2013年5月13日

 富士山の世界文化遺産について4月30日、登録の可否を調査する国際記念物遺跡会議がユネスコに登録を勧告した。勧告を受けてユネスコの世界遺産会議で承認されると正式なものになる。ただ登録された場合でも今までの努力が終わったわけではない。その状態を維持するためには環境の維持等の対策が必要となる。■その富士山について、防災の観点から見ると、前回の噴火から約300年を経過し、地震に連動し噴火が予想されている。実際江戸時代の宝永年間1707年10月28日に東?・南海地震が発生し、その49日目の12月16日に宝永噴火が起きた。地震に連動して富士山が噴火したものと考えられている。■従来被害想定は単一の災害毎に検討しているが、連動型の場合の被害は天文学的数字になる可能性がある。また富士山噴火の際の影響について、溶岩流、火砕流等は地元の山梨、静岡、火山灰については広く東京、神奈川、千葉にも及ぶとみられている。■このため、富士火山防災対策は、山梨、静岡、神奈川等の一部は熱心に取り組んでいるが、地震との連動型も念頭に置き更に大規模で広範囲にわたる対策を検討する時期に来ているものと考える。

2013年5月7日

 憲法記念日にあたり防災の関わりを考える。大規模に災害が発生した場合の復旧・復興は、膨大な人員、機資材、資金、期間を要し広域にわたることが多く、関係機関も多い。これは地方自治体での対応の限界を越えており、国際的な影響も考慮し国家的規模で態勢をとる必要がある。■米国、英国、フランス、ドイツ等各国の憲法には緊急事態の条項が定められているが、我が国の憲法には緊急事態の条項が無い。非常の際の緊急権に当たっては、緊急権の乱用や人権の過度の制限が懸念されることから、法制化に反対する見解もある。また法律で対応できるとの見解もある。■過去の大規模災害発生の際、国の的確な判断と処置が必要な場合において、目に余る混乱や遅疑逡巡があり非常時の対応が十分でない事例があったが、今後従来の規模より遙かに大きい地震等が予想される状況から、その対応が懸念される。■このため、国家、国民の安全と安心の世界を整備するため、緊急権の法制度化の議論を深めてもらい。

 

【2013年4月コラム】


2013年4月30日

災害史の研究が大事になっている。平成23年3月11日の東日本大震災は、ある意味で過去の災害の教訓を生かし多くの人命を救った地域と東京電力福島第1火力発電所のように生かし切れず多大な被害を被った地域を示したともいえる。■災害史というと、例えば、○○史とのタイトルの下に縄文時代或いは古代に始まる時代区分にそって、災害事実を記述している著作を多く見かける。科学としての災害史はそういうものであると思う。■ただ災害の内容を研究するには、自然災害だけでも暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火等多岐にわたり、かつ、その成果は考古学、地震学、土木学、建築学、応用地質学、火山学、地球物理学、都市計画学等関連諸科学の研究に負う面が少なくない。■東日本大震災後、想定外との用語が多用されたが、その教訓を生かすためには、既存のパラダイムを再検討することから始まる。■事実、関係学会による連携が始まっていると聞く。災害の防災(減災)において、学の側面と行政へ生かす側面との狭間で舵取りが難しいと思われる。しかし、災害に対する安全・安心の世界を築くためには、災害史も総合的な視点を採り入れて考察しては如何だろうか。行政においても災害を個別に扱うだけでなく、縦割りのみで対策を検討するのではなく、学問的にも学会独自でのみ検討するのではなく、総合的に検討する時期に来ているものと思われる。

2013年4月21日

最近地震が多発している。3.11以降その頻度が増しており、一説には、地震の活動期に入っているとも言われている。地震発生の活動期・静穏期については、長期的で時系列ではこの区分が適合しないが、特定の領域である程度以上の大きな地震にはこの区分が適合する。■M8級は、発生した地震と地層調査の結果、元禄地震以降200年の間隔で再来する可能性が高い。その間隔では、現在は静穏期でやがて活動期へ移行する段階といえる。しかし、元禄地震や大正関東大震災の前に直下型地震が起きていることから、まずは直下型地震の再来の可能性が迫っているといえる。■直下型地震については、中央防災会議が平成15年首都直下地震対策専門調査会等を設け検討した。その後地方自治体では地域防災計画を見直し、直下地震に対応する計画を整備している。■しかし、PDCAではないが諸施設の整備、避難訓練等の実行面が進捗していない。勿論、直下型地震以外にも災害の脅威は存在し予算も限られることから、責任者はどこから何をすべきかは迷うところである。この場合、安全安心の世界に繋がる事項を優先して決め、ハード面・ソフト面から総合的に決めることが必要である。ただ地震がいつ来てもおかしくない状況からは東日本大震災に見られるようにソフト面特に避難を中心とした訓練を繰り返し繰り返し実行することを期待する。

【2013年3月コラム】


2013年3月31日

年度末となる3月の消防庁の防災関係調査報告は、「石油コンビナート等防災体制検討報告書」「石油コンビナート等における災害時の影響評価等に係る調査研究報告書」「大規模災害時におけるソーシャル・ネットワーキング・サービスによる緊急通報の活用可能性に関する検討会報告書」「東日本大震災記録集」「大規模災害時等に係る惨事ストレス対策研究会報告書」「津波避難対策推進マニュアル検討会報告書」などがある。■いずれも重要な検討内容と思われるが、この際、「石油コンビナート等防災体制検討報告書」「石油コンビナート等における災害時の影響評価等に係る調査研究報告書」「大規模災害時におけるソーシャル・ネットワーキング・サービスによる緊急通報の活用可能性に関する検討会報告書」に注目したい。■まず石油コンビナート関係報告書であるが、「石油コンビナート防災の抜本的な強化」というだけあって、広範囲の内容を持ち、時期に適った事項と評価できるが、抽象的文言が多い点が気になる。■また、ソーシャル・ネットワーキング・サービス関連の報告書は、災害発生時には電話ではつながりにくい状況であったため、この解決は喫緊の課題であったが、情報の伝達に道筋が出来たといえる。■災害はいつ襲ってくるか分からない。調査報告書の段階は、まだ検討すべき課題や余地もあるが、今後更に検討を深めると共に、具体化を図り、早期に実行段階に移行してもらいたい。

 

2013年3月29日

政府の中央防災会議作業部会から南海トラフ巨大地震が発生した際の被害推計が発表された。経済的被害規模は、約220兆円3千億円と国内総生産の半分弱、東日本大震災の約10倍の規模となる。関東以西東海地方から九州地方にかけて大動脈が寸断され、主要都市、経済集積地域が打撃を被る。■今回の想定は、たとえ発生確率が低くとも想定外を避け最悪の事態に備えるために検討したもので、それだけに被害の規模は東日本大震災より遙かに大きい。■そのため、対策は同じ海溝型地震の東日本大震災の教訓を生かし、津波からの迅速な避難態勢の整備、緊急避難施設の確保、施設の耐震強化、都市(整備)計画の見直し及び高台への移転促進、官公庁・主要産業及び工場等のリスク分散、備蓄の見直し、広域相互支援態勢の整備等が施策として考えられる。■今後は、新たな地震対策の中・長期計画を策定し、膨大な施策のなかで軽重緩急をつけ、優先順位を明確にして予期される地震に対して着実に対策を具現化することが求められる。

2013年3月24日

最近のエネルギーに関する話題は、日本が海底からメタンハイドレードを取り出す事に成功したことである。エネルギー資源の確保の可否は国家経済の行方を左右する問題であり、しかも96%を海外に依存する我が国で、世界に先駆けて自国開発が成功した意義は極めて大きい。■メタンハイドレードは、燃える氷とも言われ、メタンが水と結合して水和物になった氷状の固体をいう。このメタンハイドレードは、海底下の浅い地層に存在し、埋蔵量が多く世界に広く分布しており、日本でも南海トラフ、北海道奥尻島海域に存在する。■日本のエネルギーは、現在原子力発電、火力発電、再生可能エネルギー(水力、風力、地熱、太陽光等)等に使用されているが、福島原発事故以来原子力発電の再開が厳しい状態が続いており、加えて再生可能エネルギーはまだ不十分の状況から、火力発電が再び脚光を浴びている。しかし、火力発電は、石油、石炭、天然ガスを使用し、価格の高騰、環境問題の他海外に資源を依存する問題がある。■こうしたエネルギー問題を解消するため、今回の開発が実用化すれば、エネルギー自給率の向上、つまり海外依存率の低下につながり、安定的にエネルギー資源を確保出来るようになる。今後更なる技術開発を期待したい。

2013年3月11日

東日本大震災が発生してからから2年になる。3月6日現在1万5,881人の貴い人命が失われ、行方不明者は2,676人と被害者は計1万8,557人を数える。被害地域は1都1道10県と広域に及んだ。■現在は、道路及び鉄道の一部を除き航空等は復旧し、産業については自動車、電気等製造業の工場は再開したが、津波等の危機管理対策は今後の検討課題になっている。また、商店街は次第に活気を取り戻してきているが、仮設建築物が少なくない。水産加工業は進捗しておらず就業者数も少ない。住民の生活に係わる市町村の復興計画は、住民の合意形成が難しいため進んでおらず、仮設住宅には今なお約31万人が住んでいる。■東京電力福島原発事故による放射能の影響は多大なものがある。瓦礫処理、放射能の除染、汚水処理が遅々として進まず、その処置に当たっては長期にわたることが予想される。■今後は、遅れている内容の復旧・復興を急ぐと共に、東日本大震災を契機として原発に関連する活断層調査による安全性の確認、原子力リサイクルの具体化、今後の東海、東南海、南海トラフ大地震を予期した津波対策等が必要となる。政府は今回13兆1054億円という多額の補正予算を投入し、復興防災対策に充当しているが、当面の処置対策だけでなく、長期的な対応が必要となる。この際、日本の将来を見据え災害に対する重点施策を戦略的かつ効果的に達成するよう努めてもらいたい。

2013年3月7日

米国で政府歳出の強制削減がいよいよ始まった。 強制削減される歳出の規模は10年間で1兆2千億ドル(約110兆円)と極めて多額である。2013会計年度の削減額は850億ドルとなる。 ■この背景には、民主党と共和党の主張の違い、政府・行政に対する考え方の相違から来ており、加えて議院のねじれ現象から政府民主党の意見が議院で採決されない点がある。当初は2013年1月から発動される予定だったが、「財政の崖」問題の与野党合意で発動が3月1日に先送りされていた。■この強制削減による影響は、米軍の戦力削減に伴う即応能力に低下、住宅支援の削減、航空管制官の削減、教職員の解雇なども懸念され、GDPは0.6ポイント押し下げると予測している。■米国の予算の動向は、米国の問題ではあるが、世界の政治経済に与える影響が大きいので、引き続き注視する必要がある。

【2013年2月コラム】


2013年2月24日

安倍首相は22日、オバマ大統領との首脳会談で日米同盟を修復する目的をもって、安全保障、エネルギー問題、環太平洋経済連携協定(TPP)等を議論したようだ。いずれも重要な問題だが、とりわけ環太平洋経済連携協定(TPP)については、野党以外に与党にも反対論が根強いだけに注目された。■環太平洋経済連携協定(TPP)は、2006年シンガポール等4ヵ国が協定したことに始まり、現在11ヵ国が参加している。同協定は、アジア太平洋地域における高い水準の自由化が目標とされており、物品市場アクセス、サービス貿易にとどまらず、非関税分野(投資、競争、知的財産、政府調達)など21分野に及ぶ広範囲の協定であり、これによる経済効果は大きいと見られる。■我が国は天然資源に乏しく資源を輸入して製品を輸出する貿易に依存せざるを得ない立場にある。また、同じ立場で貿易上の競争関係にある韓国は、米国との自由貿易協定(FTA)を締結し、いち早く貿易の推進を図っている。このことから、我が国が環太平洋経済連携協定に参加しない場合は、韓国に不利な競争を強いられる可能性があるが、参加した場合は、韓国が米国との協定締結に当たって不利な条件を認めたのと同様の厳しい条件を受け入れざるを得ない可能性もある。■いずれにせよ環太平洋経済連携協定の参加に当たっては、シミュレーションをして利・不利を明確にするとともに、長期的で合理的な対策を十分に練り上げることが経済の危機管理上重要といえる。

2013年2月21日

ロシアウラル地方のチェリャビンスク州付近に15日、隕石が落下し約1000人負傷したとロシア主要メディアが伝えている。ロシアアカデミーによると、この隕石は直径数㍍、重さ10㌧、秒速15~20㌔で大気圏に突入したものと推定されている。■そもそも隕石は、地球以外の天体から固体物質が落下してきたもので、その大きさは数百㌘から数百㌧まで大小様々である。また、その影響も様々である。隕石の落下は世界各地で見られ、我が国でも大昔から伝承が残っており、頻繁にある現象ではないにせよ、いつどこに落下しても不思議ではないようだ。■その意味では想定外というべきだが、とはいえ、手をこまねいているわけにはいかない。危機管理上は宇宙探査技術の向上により隕石の情報収集と分析を短時間に行い、落下予想地域の住民を速やかに避難させる等の態勢を作ることが必要となろう。

2013年2月14日

このところ安全保障上の諸問題が連続して生起している。中国海軍の艦艇による海上自衛隊護衛艦や護衛艦搭載ヘリへのレーダー照射と北朝鮮の地下核実験である。またパソコンによるサイバーについても立場、目的によっては安全保障にも波及する事件だ。■中国と北朝鮮は一時代前と比べると少なくなった社会主義国で主義思想、政治体制ともに我が国とは異なり、共通点が多くないのも事実である。■両国に関わる前述した事件は、我が国の安全保障に影響を及ぼす出来事で看過するわけにはいかない性質の問題である。しかも地政学的には同じ極東地域で近隣諸国、輸送手段が発達した今日時間的にも近くなっており、好むと好まざるとに関わらず折り合いを付ける必要がある。■それには、まず我が国独自の基本方針の下に経済面、軍事面を考慮しつつ国連や米国等と連携した外交を多元的に展開し、危機を回避する必要がある。その意味では我が国の政治外交力が問われているといえよう。

2013年2月4日

2013年度政府予算案が臨時閣議で決定された。92.6兆円の大型予算である。それでも昨年民主党政権が編成した12年度当初予算よりも減額している。ただ、公共事業費が増大したことから「人からコンクリートへ」に戻ったという人もいる。■防災関係費の視点で見ると、今後の首都直下地震、東海地震・東南海地震、南海トラフ巨大地震、火山災害等に対する被害の甚大さを考慮すると災害対策費に膨大な予算が必要となる。また、高度成長期に集中して整備されたトンネルや橋梁等社会資本の老朽化(総務省行政評価局報告書)が進んでおり、今後益々悪化すると予測されることから、こうした災害対策費も必要となる。それが結局安全安心の世界を築くことになる。その意味では「人もコンクリートも」必要というべきかもしれない。■社会資本については、道路等の整備に当たり総合的にライフサイクルコストをあまり考慮していない面がある。そのうえ建設後老朽化が進むにつれて維持修繕費が不足する事態が長らく続いていた。こうしたつけが今出てきたといえる。■しかし大型予算を編成してもこれだけの災害対策費を単年度で賄うことできないうえ、仮にできたとしても財政規律の面では許される状況ではない。この際、長期的視点で内容の軽重緩急と予算全体とのバランスも考慮し、国民が納得できる計画を策定し、実行してもらいたいものである。

【2013年1月コラム】


2013年1月30日

アルジェリア東部の天然ガス関連施設で発生したイスラム武装勢力による人質事件は、 国外においても危機管理に対する意識を否が応でも再認識させられた事件になった。 過去20年以内で日本人に関連した国際テロの事件は、ペルー日本大使公邸占拠事件、イラ ク日本人青年殺害事件、アルジェリア人質事件があり、今回が最も傷ましい事件となった 。■国際テロは9.11以降米国以外にも対象国を拡大する傾向を見せている。従来外務省か ら危険渡航国として渡航情報の提供はしているものの、海外で勤務する日本人が増えてい る現在、これだけでは不十分なことが明瞭になった。■そこで日本版NSC設置の機運が醸成 している。日本版NSCとは、米国の国家安全保障会議(National Security Council)を念 頭に置いた安全保障の助言機能を有する政府の組織であると思われる。■最近の事案をみ ると、武力侵攻事態からテロ事態まで状況の変化の激しさとスピードの要求度は以前にも 増して顕著になっている。このため、速やかな情報収集と重要な意志決定を短時間にしな ければならない状況が生じており、日本版NSCがその機能を果たすことを期待したい。

2013年1月20日

最近の報道記事を見ると、尖閣列島及び同周辺における中国による領海侵犯及び領空侵 犯、また国際的にもアルジェリアで起きたイスラム武装勢力による人質事件など安全保障 に関わる危機管理事案が多い。■安全保障は、危機管理の範疇でもリスクの度合いが高く 影響力の強い場合が少なくないことから、万が一交渉が失敗すると悲惨な状況に到ること になりかねない。■我が国は、危機に対する認識がやや薄いように思われるが、今後悲惨 な事態を招かないためには、国家として一途の方針の下に平素から行動の準拠となる法令 を整備して、基礎情報を収集し、組織内の情報共有化を図り、関係諸外国と交渉ルートを 確保し、脅威の度に応じた態勢を整備する等、武力事態やテロ攻撃等に対する対応の漏れ を無くし、突然に対応せざるを得ない局面を最小限にしておくことが重要である。

2013年1月15日

昨年12月27日に安倍政権が発足し、早速24年度補正予算案編成、25年度予算案の編成な ど正月早々から活発に始動している。 ■安倍政権は長引く不況を脱するため大胆な金融緩 和、機動的な財政政策、成長戦略の3本の矢を推進するため、8日初会合を開いた日本経済 再生本部及び9日復活した経済財政諮問会議は、その中の重要な組織である。日本経済再生 本部は、成長戦略立案の司令塔で主に実行面を担い、経済財政諮問会議は、長期的な計画 面、すなわち、中長期的な経済財政運営の方向性を示す「骨太の方針」を作成し、予算編 成の基本方針を策定する。 ■しかしながら、総理大臣の下に経済の牽引力を担う組織が 併存することは組織運営上一抹の不安を感じる。戦前明治帝国憲法下、陸軍と海軍が同等 の立場でそれぞれが権限を持ったため、国家戦略の不整合があり、組織運営上非効率であ った。今回の2組織は役割が異なるが、それだけに双方が自己組織の論理を主張し、整合 性がとれない事態を憂える。 ■そこには首相の強力なリーダーシップが必要であり、と 同時に各組織の調整や連携する場が必要ではないだろうか。

2013年1月11日

危機と思われる事態は年々多種多様になり、その件数も増加傾向にある。危機において もっとも望ましいことは、適切な対策を講じて危機に到たらしめないことであり、その次 は、危機発生に対し適切に対処することである。「孫子」の謀攻編によると、百戦百勝す るのは最高の善とはいえず、戦わずして敵を屈服させるのが最高の善といえる。という。 蓋し名言である。 ■しかしながら、これはなかなか至難の事でもある。例えば、この12 月25日から1月6日の間だけでも危機に関わる問題は、トピックスに掲載した戦闘機の緊急 発進を始め6件の事例があり、トピックスに掲載した以外にも、原発地域の活断層評価、原 発再稼働問題、地域防災計画の策定遅延問題、天井板の崩落に端を発する高度成長期のイ ンフラ整備、石油コンビナート防災強化施策、中国に続く韓国の大陸棚拡張問題等がある 。 ■加えて、現在実施している東日本大震災の復旧・復興の継続があり、今後は防災・ 減災上は首都直下型地震、南海トラフ地震への対応、経済上は環太平洋経済連携協定への 態度、円の為替動向、東アジアの安全保障などの問題がある。 ■これらが危機に到らな いための対応は、近年ありがちな場当たり的弥縫策で糊塗するのではなく、根本的かつ中 長期的な視点にたってハード面とソフト面の双方の対策が必要である。このため、先ず国 家として明確な方針の下に、想定外などとならぬよう予想される危機事態を考慮して方針 が具体化できるような一元的組織、計画、態勢の整備を行い、真に必要な事業の効果的な 推進を望む。