防災コラム

【2012年12月コラム】


2012年12月19日

最近の報道を見ると危機管理に該当する記事が目白押しである。それは災害が多く発生している証左でもある。危機管理最初の段階で重要なことは、情報の収集である。収集は、目標が明確でないとか、手段が適切さを欠けば無意味になる。

今回中央自動車道天井板崩落事故が発生し9名もの尊い生命が失われた。定期検査が目視で行われ、打音検査では行われなかったそうである。この件は情報収集の手段の選択に不備があったといえる。

情報は英語ではインフォメーションが使用されるが、インテリジェンスの場合もある。しかしその意味するところは異なる。様々な見解があるが、前者は知識、ニュース、案内など一定の事実を表現し、後者は知能、軍事などの情報、諜報や精神的な作用の結果を評価する時に表現する場合が多い。これを単純化して言うと、事実・データと分析・評価し判断材料に使用されるものとの違い。といえよう。

災害情報が情報の域を超え、危機・事故に発展するのを未然に防止するためには、災害が小さいうちからその芽を摘み取る事が重要である。そのためには、災害防止の目標を定め、災害に関わる情報の収集→分析→評価を適切におこない、的確に判断して対処する一連の行動が重要となる。


2012年12月11日

危機管理は、亀井利明氏によると、「リスク中の異常性が高くて強い巨大災害、持続性の強い偶発事故、政治的・経済的あるいは社会的な難局などを対象とする」(リスクマネジメント用語辞典)といわれる。

今週の記事で三陸沖地震、爆弾低気圧は自然災害の過去の事例、中央自動車道笹子トンネル崩落事故、北朝鮮弾道ミサイル情報、東京電力福島第1原発事故関連は人為的或いは人為的災害に近い過去の事例がある一方、今後災害をもたらす可能性がある活断層かどうかを調査中の日本原子力発電敦賀原発の事例があり、いずれも危機管理の対象となる。

この様な危機管理においては、基本的に事前の危機回避と抑止が重要で、次いで事態発生の際は事態直前と直後の対応が重要であり、最後は復旧、復興など事態収束に向けての対応と再発防止の諸施策が重要となる。

事態が時期的3段階を踏むかどうかは一概に言えないが、少なくとも平素から情報収集を適切に行って、事態が発生して始めて対応をすることは極力避けたいものだ。

今回の事例では、中央自動車道笹子トンネル崩落事故や東京電力福島第1原発事故は事前の危機回避と抑止策を講じておれば発生しなかった事例であろう。これに対し、三陸沖地震は事態発生後の対応が重要である。今後の喫緊の課題である日本原子力発電敦賀原子力発電所における破砕帯(断層)の情報及び北朝鮮弾道ミサイル情報へ対応は、収集した情報の評価について安全を重視した対策を採るべきである。


2012年12月5日

東京電力の福島原発事故に関して、「福島県復興本社」を、福島第1原発に近いスポーツ施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)に置く件、相次ぐ危機に焦燥感を募らせる第1原発と、公開された映像から現場の実情を把握しきれない本店のちぐはぐな対応が映し出された件は、組織における本部と現場の関係の重要さを改めて示したものと言える。

組織はその規模が大きくなり、地域も広大になると管理能力を確保するため、本社・本店、支社、支店など階層的構成をとるのが通常である。

そのような場合、規約等で職務ごとの任務、役割分担が明示されており、平常時は規模の大小や距離の長短にかかわらず意思の疎通が出来円滑に業務を遂行できるが、一旦緊急事態が発生すると往々にして意思の疎通や状況の把握が困難となり、事態の特性に応じた対応が出来ずに組織機能が維持できなくなる。

先の大戦において、参謀本部は作戦地域の拡大に伴い、派遣した陸軍の状況把握のため、各種の手段による報告を求め、或いはしばしば幕僚を派遣して意思の疎通と状況の把握に努めた事例がある。

本社と支店等の意思の疎通を図り、状況把握を的確にするためには、その目的や役割に応じて権限と責任ある立場の者を現場進出させたり、被害状況の規模や今後の見通しによっては、本社機能の一部の現場進出などを適時に行うことが必要である。また、情報化社会といわれる今日、情報通信手段のツールは多種多様であり、今回のテレビ会議も情報共有化の有力な手段ではあるが、切迫した状況における組織トップによる現地進出はリーダーシップの表れであり、現地の状況を正確迅速に把握出来る重要な手段である。

また、地域防災計画を見ると、災害発生時の応急対策の組織が書かれているが、そのための移行要領が不明で実際的でない計画がある。災害発生時の初動において状況把握の困難さや意思の疎通の欠如から無用な混乱を招かぬよう過去の事例に学び、実際的な訓練を通じて具体化することが今後の参考になるのではないだろうか。

【2012年11月コラム】


2012年11月28日

原発の是非を巡り賛否両論が出ている最中、国際エネルギー機関(IEA))事務局長による日本の脱原子力発電依存計画が地球温暖化対策の目標を困難にするとの指摘、環境庁の石炭で発電された電力の場合は二酸化炭素(CO2)排出量が増える懸念など脱原子力発電や原発稼働ゼロに対する課題を指摘するニュースが相次いで登場している。

東京電力福島第1原発事故に伴い、低下するエネルギーを太陽光、風力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーで補完しようとした場合、太陽・風の天候次第で安定的な発電設備ではない、設備導入の経費負担が大、発電量が少ないなどから、火力発電所の役割も見直されている。しかしこの場合化石燃料を使用することから、電気料金の上昇と二酸化炭素の排出量が増加することになり、経済問題や環境問題が発生する。

1980年代CO2による地球温暖化が指摘され、やがて季候変動枠組条約により「大気中の温室効果ガス濃度」を「危険を及ぼさない水準で安定させること」を目標にしたが、目標達成が不十分との認識の下、1997年先進国の排出量の義務を定めた京都議定書が締結された。我が国の削減目標は6%であったが、原発事故もあり達成出来ていない。

しかし地球温暖化は、生物の絶滅、食物連鎖の混乱、台風・水害の増加、北極・南極の氷解による海面上昇など地球規模の被害をもたらすと考えられることから、我が国としては重視する必要がある。

今後は長期スパンで総合的なエネルギーの活用の視点に立ち、再生エネルギー、火力発電、原子力発電の長短を補完しつつ、重点エネルギーの技術開発と基盤の整備を急ぎ、安全な世界を推進する必要がある。


2012年11月20日

今週は、東日本大震災関連の記事の他、ノロウイルスによる食中毒、液化天然ガス(LNG)の漏洩事故、衝突回避システム等についてトピックスに掲載した。

こうした事例も危機管理の対象となるが意外と思う人がいてもおかしくはない。ちなみに、危機管理は、「当初は戦争、内乱、紛争、テロ、誘拐等の軍事的、国際的危機に関する対策、戦略、措置などの意に用いられたが、次第に国内行政、巨大企業、一般企業、自治体、学校、家庭などの危機対応にまで拡大され」た。(リスクマネジメント用語辞典)つまり、危機管理は、地震、風水害等の自然災害以外に広範囲の事態に使用され、また、時代の変化と共に、様々な組織や家庭にまで及び、それぞれの「リスク」とみなされる各事態の対処に使用されている。

この背景には、冷戦時代以降の国際情勢の枠組みの変化と政治経済の複雑化、グローバル化、多年に亘る高度の技術開発と開発速度の加速化、環境問題と自然災害の巨大化等があり、事態解決が容易でない状況になっており、そうした世相を映した事象と言えよう。

それだけに、平素から諸計画、法令やルールなど基礎的事項を整備し、危機管理に関わる情報を収集して災害の芽や事態が発生した場合、分析評価を適切に行ない事態解決への対応を誤らないことが重要だ。


2012年11月14日

最近活断層という用語が紙上を賑わせている。断層は海洋プレートの動きにより生じた岩盤等の割れ目やずれを指すのに対し、断層のうち最近の時代に繰り返し活動し、今後も活動すると考えられる断層を活断層と言うとされる。現在は過去13万年間動いた断層を活断層と言うからその期間の長さに驚かされる。

活断層は地下の岩盤が地表に出ているとは限らないためその発見は容易ではない。それ故、地表に現れない潜在断層も有ると推測される。我が国にはわかっている活断層が約2000あるが、それでも地震の規模・確率の評価を終えた例は少なく細部は不明な場合が多い。

現在原子力発電所が有る地域は、その建設に当たり断層について調査し、その結果問題がないと評価された場所に原子力発電所は建設されていた筈である。しかしその後の調査技術の進歩や調査方法により新たに活断層が発見される事態が出てきている。

今回原子力規制委員会が、関西電力大飯原発の敷地内を通る断層「F-6破砕帯」を活断層の疑いで調査したものの、委員の意見がまとまらず結論が持ち越しになった。原発の再稼働を巡り賛否両論あるが、この際、委員会は一切の先入観を持たず、十分に調査し、専門的知見をもって住民の生命と身体の保護になるよう結論を出してもらいたい。


2012年11月4日

毎年9月1日(防災の日)を目安に防災訓練が全国各地で行われている。防災訓練が9月に多いのは関東大震災が大正12年9月1日に発生したことと台風シーズンであることによる。勿論災害はこの時期に発生するとは限らない。事実、阪神淡路大震災は1月、東日本大震災は3月に発生している。常在戦場のつもりで災害の準備をしなければならない時代に来ていると言うべきだろう。

防災訓練は、防災・減災対策の有力な手段である。防災訓練は、平素から実際に災害が発生した場合に適切に対応出来るようにするものである。そのための訓練要領は、内容と対象を顧慮して、訓練の導入は講演、セミナーで、次いで図上訓練、仕上げは実動訓練と段階的に進めると訓練効果が上がる。また、訓練練度を高めるためには訓練回数がものをいい、日頃の訓練こそが災害時に生命と身体を守る事になる。

防災訓練をみていると、九都県市合同防災訓練を始めとして、訓練関係者を除いた住民等の訓練参加者が大変少ない。人は災害に遭遇した場合においても訓練した以上のことは出来ないので、参加者が少ないことは災害対策上の懸念材料だ。

今月3日宮城県で大規模な防災訓練が震災後初めて行われた。宮城県気仙沼市では市民ら3100人が参加した。これは大都市の訓練参加者にも匹敵する数字だ。巨大地震を経験したか否かが意識の差になり参加率の差になったものと思う。防災意識を多くの方に持ってもらうには、学校の防災教育で素地を作り、訓練企画者は、想定外にならぬように、地質学・地震学や防災史等の教訓を採り入れ、創意と工夫を凝らした訓練により、住民の訓練参加者を増やすような努力を期待したい。

【2012年10月コラム】


2012年10月29日

地球は46億年前に誕生し、長い年月を経て大陸が形成された。プレートテクトニクス理論によると、地球の表面には運動をするプレートが存在し、プレートとプレートとの状態により造山山脈が形成され、断層運動が起きる。プレート境界で地震が起き易い背景となっている。この様な現象を分析検討するには、地球史的で地道な研究が必要となる。

昨年東日本大震災が発生した当時、想定外との言葉が多用され流行語にもなった。しかしそうでしょうか。今から約1200年前、貞観11年(869年)に東北地方に大地震が起き仙台平野が大津波に襲われていた記述が『日本三大実録』で明らかになっている。したがって、歴史的な先行研究成果を採用しておれば、想定できたはずなのに想定してなかったに過ぎません。

先日原子力規制委員会は、40万年以降に動いた断層は今後も動く活断層の可能性があると指摘したが、新しい知見に基づいた見解であり、想定外にならないよう現在国の耐震指針を見直し、安心安全の状態を整備してもらいたいものと思う。